水道法改正案について

今年の3月7日に閣議決定された水道法の改正案が現在国会で審査中です。今回の水道法改正案は日本の水道事業の人口減少に伴う水需要の減少、水道施設の老朽化、深刻化する人材不足等の水道の直面する課題に対し、水道基盤の強化を図る趣旨です。改正案はこうした課題解決に向けて講じるべき施策を示しています。

法改正案では「関係者責務の明確化」として都道府県に水道基盤の強化に関する施策の策定、水道事業者はその施策の実施、具体的には「広域連携の推進」として広域連携や経営統合などによる経営規模の拡大によって水道基盤の強化を求めています。

そして、「資産管理の推進」として水道施設台帳の作成・保管などを義務付け、それとともにアセットマネジメントによる計画的な老朽化施設の更新を図る旨を定めています。

さらに、「官民連携の推進」として多様な官民連携の選択肢をさらに広げるという観点から、水道施設の所有権を地方公共団体が所有したまま、その運営権は民間事業者に付与できる仕組みを導入するとしています。現行の水道法では地方公共団体が水道事業許可を返上して民間事業者が新たに許可を受けること(民営化)が必要です。今回の改正では災害対応などのリスク管理も含めて地方自治体が主体性を持ち責任を負えるように水道事業の許可を残したまま、一部事業運営権の設定を可能にするようにしています。

また、「指定給水装置工事事業者制度の改善 」として事業者の資質を保持し、実態との乖離防止を目的として事業者の指定に5年の更新制を導入するということです。

 

○参考資料

漏水対策は調査から監視へ

当社は主要配水幹線や老朽化により漏水の頻発する管路に漏水検知センサーを設置して定期的に巡回して漏水監視をしています。それにより漏水を早期に検知し断水事故や経済損失を削減することができます。 “漏水対策は調査から監視へ” の続きを読む

人工衛星による水道管の漏水探査について

先日、イスラエルのベンチャー企業「UTILIS」の日本の代理店「サンテック」*の本多さんとお会いしました。

UTILIS社とは衛星による水道管路の漏水探査するクラウドサービスを提供しているベンチャー企業です。この会社の提供する技術サービスは水資源関連のベンチャー企業の支援機関 ImagineH2O の2017年度最優秀賞を受賞しました。

その技術は人工衛星による惑星の地表面の探査技術に基づいているとのことです。地下数メートルに到達するマイクロ波を利用して地下の水道管からの漏水による地下の誘電特性の違いにより漏水を判定するということです。漏水探査手順は、

①スペクトル衛星画像を取得
②画像の放射分析修正(跳ね返りのフィルター修正)
③Utilisによるアルゴリズム解析(漏水による電気伝導率、スペクトル分析)
④WEBに基づいた地理情報システム(GIS)で漏水箇所を報告
⑤GISの漏水箇所に基づき現地の漏水調査チームがピンポイントに特定

ということです。

3,600平方キロメートル(60× 60㎞)同時に漏水探査するこの技術は夢のような技術です。もし確立されれば地下に埋設されて発見が困難な地下漏水を人工衛星やドローンで一瞬で発見できるのでしょうか。現在、世界中の都市水道で深刻な問題となっている漏水問題と水問題の解決に大いに貢献するに違いありません。

>>ImagineH2O
>>Utilis
>>㈱デサンテック

>>blogAIによる水道管漏水特定の実証記事について

*後に日本総代理店は ジャパントゥエンティワン(豊橋市)に移行しました。

地域水道支援センターの総会に参加しました

先日6月10日に「NPO法人 地域水道支援センター」の総会とセミナーに参加してきました。地域水道支援センター(CWSC)は高齢化や人口減少、海外においては貧困、技術不足などにより水の確保や運営が困難になっている地域の「小さい水道」をマネジメント、技術支、維持管理、学習・啓発を支援することにより、健全で自主的な持続可能な水道を実現しようというものです。

総会では平成28年度の報告と平成29年度の計画を審議があり、その後には小規模水道における粗ろ過・緩速ろ過についての実証試験についてのセミナー発表がありました。セミナーの一つは岩手県花巻市の岩手中部水道企業団の小又浄水場実証試験について瀬野守史 理事から、二つ目はJICAの支援を通じたフィジー、サモアでの緩速ろ過の実践について中本忠信 理事からの講演でした。

CWSCの技術支援の柱は粗ろ過・緩速ろ過法です。この技術は自然界の浄化機能に学び、水性微生物による分解活動を利用する「生物浄化法」で、浄水課程で薬品や電力を使わず、環境負荷やエネルギーコストの小さいろ過方法です。この技術は様々な規模、地形、水源などの条件に適用でき、また機械部分かほとんど無いために頻繁なメンテナンスの必要な膜ろ過法や、常に薬品補充が必要な急速ろ過法などよりも維持管理が比較的に容易です。

現在地域の人口減少や高齢化などが進み、保守や修繕など維持管理が自治体だけでは困難で、住民自らによる水道運営の必要性も出てきている中でこの様な技術も有効であると感じます。

 

>>信州大学名誉教授 中本忠信ブログ
>>NPO法人地域水道支援センター

全国漏水調査協会の総会が開催されました

6月9日に東京の市ヶ谷で当社の所属する全国漏水調査協会の総会が開催されました。

総会では前年度の事業報告と今年度の事業計画が審議されました。また、築山会長が4年の任期を終え今年度から古賀一典(㈱ライフライン)が新会長に今若博行(㈱西日本水道センター)が副会長に選任されました。

会員動向につきまして正会員3社(ジオサーチ㈱、㈱折本設備、㈱ウォーターサポート)と賛助会員1社(フジテコム㈱)の新規会員と2社の退会があり会員総数は23社となりました。

翌日には東京都水道歴史館(文京区本郷2-7-1)を見学し東京都の江戸時代から現代までの、江戸・東京の水道の歴史知ることができました。その後に水戸黄門ゆかりの名園で国の特別史跡及び特別名勝に指定されている小石川後楽園を散策しました。

 

総会の模様
総会の模様
東京都水道歴史観の見学
東京都水道歴史観の見学

 

>>>全国漏水調査協会

全国水道管内カメラ調査協会の総会が開催されました

5月30日に当社の所属する(一社)全国水道管内カメラ調査協会の7回総会が金沢市で開催されました。会場には来賓として、開催地からは金沢市企業管理者代理の上野部長、当協会の堀内厚生元名古屋市収入役・元水道事業管理者、特別会員の首都大学東京都市環境学部・小泉明特任教授、京都大学大学院・伊藤禎彦教授ほか会員など52名が集まりました。

総会では決算、予算を審議し、役員改選では(株)栗本鐵工所を理事に選任いたしました。事業計画における報告事項では主に以下の項目が決められました。

不断水カメラ調査の標準歩掛を作成

積算検討委員会がまとめた不断水式管内カメラ調査の標準歩掛を厚生労働省、日本水道協会に意見を頂き、当協会の標準歩掛りとすることを決めました。

カメラ映像で管内の評価を研究へ

管内カメラの映像から管内情報を分析する研究を再開するため「管路内面診断評価委員会」(委員長・小泉明首都大学東京特任教授)を立ち上げることを決めました。

>>一般社団法人全国水道管内カメラ協会
>>blog 水道管内不断水カメラ調査

貯水タンクにおける電気分解による塩素の再生成について。

残留塩素の管理

水道水は法律の定める塩素濃度(0.1mg/l以上)を満たした安全な水です。しかし、私たちが利用する水道水はビルやマンションの受水槽で一度蓄えられる場合ほとんどです。ここで適正な管理がされていない場合、塩素濃度が低下し雑菌が侵入すると食中毒や伝染病の原因となることがあります。常に貯水タンクの水道水が入れ替わっていれば問題ありませんが、長期滞留や夏場の水温が上昇する場合は残留塩素が減少し基準を下回る懸念あります。塩素濃度が低下した場合には次亜塩素酸ソーダを貯水タンクに追加注入する方法がありますが薬品の品質管理や注入機器の維持管理、さらには過剰注入により発がん物質の消毒副生成物質の発生リスクが高まります。

山間部や離島部の水質管理

近年は高齢化や人口減少で地方における山間部や離島部で水道などの水質管理を行なう人手が不足しています。特に、船舶での運搬給水や、海底送水管で長距離給水を行なっている離島、複数の貯水池を経由している山間部の施設では水質の安定した水道水の供給が困難になってきております。

災害時の貯水タンク利用

一方で地震災害では、貯水タンクが給水拠点として活用されたことが報告されています。特に災害避難所に指定されている公共施設の貯水タンクは大きな役割を果たしました。また、災害発生時に手術用の水や人工透析用の水を確保する必要のある病院では、貯水タンクの増設・大規模化が進められています。ますます貯水タンクの水質管理が重要となってきます。

電気分解による残留塩素の再生成と管理

このような貯水タンクの水質管理において、電気分解による塩素生成の技術が、「水道事業の統合と施設の再構築に関する調査」(平成25年2月 厚生労働省健康局水道課)に取り上げられるなど、安全な水の管理のための新しい手段として注目されています。この技術は水道水に含まれている塩素イオンを利用して、消失した有効塩素を電気分解により再生成するというものです。この装置により残留塩素濃度の低下を予防し水質管理コストの低減と消毒副生成物質の発生を抑制するきめ細かい水質管理が可能になります。電気のみで飲料水の衛生管理が可能であるために災害時の利用が期待されています。

 


NATURISER ナチュライザー

販  売:株式会社トクスイ 徳島県徳島市川内町沖島84番地
製造販売:エヌエスシステム株式会社 大阪府吹田市江坂町1丁目12番40号

 

インドネシア共和国の現地調査に参加いたしました。

平成29年1月30日から2月1までの3日間に厚生労働省の主催の「平成28年度水道産業国際展開推進事業」であるインドネシア共和国の上水道案件についての現地調査に参加いたしました。当社は上水道のNRW(注1)、及びWater Loss(注2)(無収水及び漏水)管理に関する技術支援と海外展開の為の現地調査を目的としています。

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香川県内の水道統合について。

「香川県広域水道施設整備計画概要図(案)」浄水場統合のイメージより転載
「香川県広域水道施設整備計画概要図(案)」浄水場統合のイメージより転載

香川県では県内全域の水道事業の統合が進行しています。このような県内全域での事業統合は日本では始めてとされています。

日本の水道施設は、稼動後、既に40年から50年以上経過し、その多くが更新時期を迎えています。また、人口減少による給水量の減少に伴う収益の減少や水道職員の大量定年退職による技術力の確保の問題、さらには地震に対する施設の耐震化の推進など、多額の経費を要する様々な課題に取り組む必要があることから、厳しい経営環境となることが予想されています。しかし、各市町村の水道事業者が単独で対応するには限界があり、これらの課題を克服し、将来にわたって持続的に安全で良質な水道水を安定的に供給できるようにしていくために水道事業の広域化の必要があるとされています。

 

新たな水道広域化のイメージ
「水道広域化検討の手引き」 厚生労働省 平成20年8月  “新たな水道広域化のイメージ”より転載

香川県では人口・給水収益の減少の中で各市町の水道事業が施設更新を進めて単独経営を続けた場合、家庭で20立方メートルを利用した際の平成43年の月額水道料金は、高松市では2倍近い金額に、小豆島の土庄町では約4倍になるなど、各市町で大幅な値上げが避けらません。さらには現在の2倍近い県内市町間の料金格差は43年には約4倍に広がるとしています。

この様な背景から香川県は水道サービス水準を確保・向上し県内の水道事業のあるべき姿を検討するべく、平成20年度から県内水道事業の統合・広域化について調査検討を始めました。平成25年4月には、岡山県から直島町を除く16市町と県で構成する「香川県広域水道事業体設立準備協議会」を設置しています。また協議会では調査結果を「香川県水道広域化専門委員会報告書」にまとめております。報告書では香川県内水道の特徴、現状と課題を分析し香川県水道のあるべき姿として市町及び県の設立による離島部も含めた「県内1水道」による広域化を提案しています。以下、同報告書についてまとめました。

香川県内水道の特徴

報告書では県内の水道の特徴として以下の7つあげています。①頻発する渇水に伴う渇水調整している。②県内の水道取水量の2分の1近くを香川用水に依存している。③富山県に次いで少ない市町村数と④東京都に次いで少ない水道事業数としている。⑤瀬戸内海の離島の存在。⑥岡山県からの分水受水。そして、⑦香川用水は省エネ型(低炭素型)の水供給システムであるとしています。

香川県内水道の現状と課題

さらに、現状と課題として以下の7つの視点で香川県内水道における現状と課題を整理しています。

①施設の老朽化、耐震化
昭和40~50年代に整備した水道施設が老朽化し、大規模な施設更新が必要である。平成21年度以降、過去3カ年平均の建設改良費 (約102億円)の約2~3倍の更新需要が見込 ま れ財源の確保が必要である。施設の耐震化率が低く、施設更新に合わせた耐震化の推進が必要である。

②収益の悪化
給水人口及び 1人当たり有収水量の減少に伴う料金収入の悪化。 香川県全体の損益及び内部留保金は、それぞれ平成26年度、平成39年度にマイナスに転じる。 また水道料金に約2倍の格差がある。

③技術力の確保
今後10年で、職員の約5割が定年退職するため、技術の承継を考慮した人材・技術力の確保が必要である。

④渇水への対応
頻発する渇水に対する県全体での効果的な対応が必要である。

⑤環境への負荷低減
地球環境問題等を背景に、水道事業における積極的な環境対策への取り組みが必要である。

事業統合の効果

そして報告書では香川県内の水道の特徴と課題を踏まえて将来的な事業統合の効果として以下の5点を挙げております。

①経営基盤の強化として水道施設のダウンサイジング 、二重投資の回避 さらに管理部門の効率化。②料金・サービス格差の是正 ・料金格差の是正 ・サービス格差の是正と維持向上。③技術力の強化 、施設水準の維持向上 、技術職員の効率的配置と人材育成。④渇水対策・危機管理の強化 、水源の一元管理による効率的な水融通 、危機管理体制の強化 、相互バックアップ機能の強化。⑤環境への負荷低減 ・施設の効率化を図りCO2の削減。

香川県水道事業のあるべき姿

最後に報告書では県民すべてに、安全な水を、地震、災害時を含めて安定的に供給していくためには、各水道事業者が個別利害を超えて広域的な見地から連携・協力し、経営基盤の強化や水源の一元管理などにより、課題を克服していくことを目指した「広域化」が有効な手段であり、離島を含めた香川県全域を対象区域とした「県内1水道」を推進すべきであるとしています。更には「市町及び県」での運営母体設置が最良であるとしています。


厚生労働省健康局 水道課 水道計画指導室
水道広域化検討の手引き~水道ビジョンの推進のために~」(平成20年8月)
水道事業における広域化事例及び広域化に向けた検討事例集(平成26年3月)

香川県水資源対策課
水道広域化」「香川県広域水道事業体設立準備協議会 開催状況

地震災害時の漏水調査技術員の派遣に関する協定書について(熊本市)

弊社の所属する全国漏水調査協会(東京都千代田区)では大規模地震災害時における漏水調査技術員に関し、昨年から熊本市上下水道局と協議調整を重ねて参りましたところ、平成28年10月25日に締結にいたりました。

本協定は、災害時に管路施設の応急復旧に必要となる漏水調査作業に対し、全国漏水調査協会から派遣される調査員について必要な事項を定めております。

漏水調査 緊急連絡網
地震災害時の防災対策組織表(熊本市)

全国漏水調査協会
〒102-0074 東京都千代田区九段南3丁目9番11号マートルコート麹町1002号
TEL:03-5275-3680 FAX:03-5275-4977
EMAIL:info@zenroukyou.jp

熊本市上下水道局
〒862-8620 熊本市中央区水前寺6丁目2-45
TEL : 096-381-1133 (代表)
時間外窓口(夜間、土日、祝日) TEL : 096-381-0012