衛星画像とAIによる水道管漏水特定の実証記事について

水道管路の維持管理技術に関して、以前に私のブログで取り上げたイスラエルのUtilis社と米国のFracta社が日本の水道事業所で実証実験を実施した記事がありました。

Utilis社は豊田市の報道発表によると2020年に全国で初めて衛星画像のAIによる解析による水道管の漏水調査を実施したとのことです。また、Flacta社は2019年から実証検証とその後の事業体での受託実績によるデータ蓄積で日本の管路における漏水リスク診断の可能性が広がっているとのことです。

Utilis社「日本で初めて衛星画像の解析による水道管の漏水多発地区を特定」

Utilis社はイスラエルのスタートアップ企業であり、全世界で水道事業者に人工衛星による漏水調査技術の提供を行っている会社です。

Utilis社は地下数メートルに到達するマイクロ波を利用して地下の水道管からの漏水による地下の誘電特性の違いを衛星画像により人工知能(以下、AI)による画像解析を利用し漏水を判定します。

今回の記事では、日本で初めて豊田市で人工衛星を利用して漏水多発地区を特定したとのことです。更に、現地で漏水音を確認する路面音調調査を2020年9月から2021年4月にかけて実施したところ、全部で259箇所で漏水を発見したとのことです。

FRACTA社「AI機械学習による全国自治体の水道管の漏水確率の推計を実施」

FRACTA社はアメリカのベンチャー企業でAI機械学習による水道管路の劣化診断をしている会社です。

水道管の寿命は水道管の素材や使用年数、漏水情報などのデータと、土壌、気候、地形や人口などの環境データなど1000以上の情報から決まるとされています。その因子を組み合わせ、AIと機械学習により予測しようとするものです。

FRACTA社はAI機械学習により世界で管路延⻑約20 万km、 約30 万件の破損漏⽔事故を分析しています。近年では日本国内の水道事業体で実証検証を実施しており、約3 万km 、1 万件以上の破損事故のパターンを分析済みということです。

今回のレポートでは全国の水道事業体の管路の定量データから水道管路の破損、漏水リスクを試算して数値化し、全国レベルでリスクをヒートマップで表しています。

更にその分析結果より機械学習の示す漏水、破損リスクの高い管路を最優先に更新すれば、最小限の投資でより効率的に漏水を削減して持続可能な水道事業運営が可能であるとしています。

今回の各記事では衛星画像解析のコストや漏水地区の特定精度、分析された漏水リスク管路と漏水の相関関係などの詳細はわかりませんが非常に興味のある記事です。

水道管の老朽化による漏水は長年に水道事業体にとって水源開発と同等に重要な課題です。一般的に漏水削減は敷設年代の古い管路の更新工事、人と機器による漏水調査が主でした。今後、人工衛星の画像解析や環境因子分析によるAIの機械学習が更に進めば管路管理技術の大きなイノベーションになるのでしょう。

関連リンク及び参考記事

>>AI・機械学習によるインフラ向け劣化診断 「FRACTA社ホームページ」
>>FRACTAレポート「全国⾃治体における破損確率の推計
>>PRtimes 「Fracta、AIを活用した水道管劣化予測技術を日本で初めて愛知県豊田市へ実践導入
>>Yahoo!ニュース「AIが水道管の破損確率を推計。経済活動が活発で人口集中する都市部ほど高い。リスクの高い区域もはっきり」(橋本淳司 2021.04.20)
>>AIS一般社団法人 行政情報システム研究所「公共分野のデジタル化―AI技術を活用した水道管路劣化状況のオンライン診断

>>イスラエルUtilis社 ホームページ
>>Utilis社日本総代理店「ジャパントゥエンティワン
>>愛知県豊田市報道発表「効率的な漏水箇所の発見 衛星画像の解析による水道管の水漏れを検知
>>ジャパントゥエンティワン「人工衛星とAIで宇宙から水道管の漏水を検知 世界で実績の技術が愛知県豊田市で国内初採用

>>NTT西日本 2021年4月 堺市上下水道局「AIによる水道管路劣化予測等の実証実験を実施
>>NTT西日本 2021年2月 名古屋市水道局「IoTを活用した漏水検知技術評価に関する共同研究について

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