11月7日にマイドーム大阪でジェトロ主催の水ビジネスセミナーに参加してきました。今回は東南アジア4ヶ国(タイ、ベトナム、インドネシア、マレーシア)における水関連政策や規制についてと進出企業の事例発表でした。
事例発表は全てメーカーで汚泥脱水処理機の株式会社研電社、ポンプの株式会社鶴見製作所、濾材、濾過器の日本原料株式会社の中堅・中小企業3社で、進出先での現地パートナー関係や模倣機器対策やJICA(国際協力機構)の支援について講演していました。
現在の東南アジア4ヶ国での求められている技術は、上水道分野においては漏水・無収水対策、管路網の管理、水源水質の汚染対策、高度処理、水質モニタリング、浄水場の計装・管理等の要素技術、民間資金導入による浄水場等運営等であるとし、海外進出における成功要因は現地企業パートナーの信頼確立、価格設定としていました。以下はセミナー概要です。
東南アジア4ヶ国においての国土面積はインドネシアが日本の5.1倍、タイが1.4倍、ベトナム、マレーシアが約9割程度である。各国の人口は2015年でインドネシアが2億5.5千万、ベトナム9.1千万、タイ6.8千万、マレーシア3.1千万人であり、近年は急激に増加傾向である。1人当たりのGDPはマレーシア、タイ、インドネシア、ベトナムの順に高い。水道管路による給水率についてはベトナム、インドネシアは20%台、タイは57%でマレーシアのみ約96%程度と高い。
維持管理、運営分野での最近の日本企業の活動
タイ王国では2013年東京水道サービスが無収水対策のパイロット事業を受注し、TESCO(タイ王国首都圏水道公社)と合弁でTSS-TESCO社を設立している。シンガポールでは2016年日本工営がTigris Water Partnershipに出資し、アジア諸国での水関連のEPC(設計、調達、建設事業)事業を拡大させるとのこと。ベトナムでは2013年に国際航業がHueWACO(フエ省水道公社)にGIS、水道維持管理システムの構築を受注している。地方自治体では2013年に北九州市が神鋼環境とベトナムハイフォン市で高度処理施設を受注し、JICAのジャカルタ下水道整備調査をコンサル数社と受注している。
タイ王国の水政策
タイの給水は首都水道公社、地方水道公社、地方自治体が担う。11%は管路給水がなされていない。国家水戦略として2060年までに255の都市コミュニティ・経済地域へ新しい給水システムの開発、688の地域に給水サービスの拡大を目指す。
ベトナムの水政策
主管庁は建設省、各地方人民員会の建設局が担当している。都市部では傘下に水道運営会社を保有。PPP(官民連携〉事業も実績がある。社会経済開発10ヵ年計画では安全で清潔な水アクセスを都市部で95%、農村部で90%を目標とする。
インドネシアの水政策
水の監督官庁は公共事業・住宅省、その中で人間居住総局が上下水道を管轄、水資源総局が水資源のの開発管理を担う。上下水道の管理運営は地方自治体が担う、自治体により傘下の公社に移管している場合がある。都市部の水道管接続率は33%と東南アジアの中でも遅れており、水道管以外では、個人の井戸、小規模水販売業者あるいは水販売スタンドに頼っている。農村部では大部分は浅井戸、雨水貯水、近くの表流水を利用している。政府の「中期開発計画2015-2019」では2019年までに安全な飲料水へのアクセスを、管路で59%、非管路では41%全体では100%をめざす。具体的には2019年までに1000万世帯に対して水道接続をおこなう。その予算は4000億から6400億円規模としている。
マレーシアの水政策
マレーシアはエネルギー・環境技術・水省が水政策、開発プロジェクトの計画評価と監視、国家水サービス委員会が上下水道サービスに関する監督をおこなう。マレーシアの上水道整備率は95.5%と高いが無収水率が35%と高い。「第11次マレーシア計画2016~2020」では上水道利用率99%、無収水率を25%を目指す。